スリッパリーエルム(Slippery Elm)

投稿者 :リンクプロ on

学名

  • Ulmus rubra(別名:Ulmus fulva

科名

  • ニレ科(Ulmaceae)

注意事項

  • 全体の樹皮(Whole Bark)と内樹皮(Inner Bark)を混同しないこと。
    • 薬用に使用されるのは「内樹皮」のみ。

概要

スリッパリーエルムは、北米(カナダ東部・アメリカ東部および中部)原産の広葉樹

  • 名前の由来は、内樹皮を噛んだり水と混ぜると滑りやすい(Slippery)粘性を持つことにある(90908,90909)。
  • 伝統的な用途
    • 経口:消化器系(胃腸・泌尿器系)の不調に使用
    • 外用:皮膚疾患に使用

⚠ 安全性

「適切な量を経口摂取する場合、おそらく安全(Possibly Safe)」

  • 信頼できる情報に基づき、安全性が示唆されている(4,12,272,512,1740)。

🚨 妊娠・授乳中

  • 「信頼できる情報が不足しているため、使用を避けるべき。」
  • 歴史的に、スリッパリーエルムの樹皮は子宮頸部に挿入することで「堕胎」に使用されていたとされる(4)。
  • ただし、経口摂取による堕胎作用があるかどうかは不明。

⚠ 副作用

一般的には耐容性が高い

  • 経口摂取では、大きな副作用の報告なし。
  • 外用使用に関する安全性評価は未実施。

皮膚接触による「接触性皮膚炎(Contact Dermatitis)」が報告されている

  • 主にオレオレジン(Oleoresin)成分による影響(6)。

⚠ 効果(有効性)

❓ 「信頼できる十分な証拠がない(INSUFFICIENT RELIABLE EVIDENCE)」

伝統的に以下の症状に用いられてきたが、科学的根拠が不十分。

  • がん(Cancer):単体の効果は不明(複数成分の組み合わせとして評価あり)。
  • 便秘(Constipation)
  • 咳(Cough):スリッパリーエルムを含むトローチの効果は不明。
  • 下痢(Diarrhea)
  • 炎症性腸疾患(IBD, Crohn病・潰瘍性大腸炎)
  • 過敏性腸症候群(IBS):単体での効果は不明。
  • 消化性潰瘍(Peptic Ulcers)
  • 咽頭炎(Pharyngitis, のどの痛み):トローチの有効性は不明。

さらなる研究が必要。


⚠ 用法・用量

  • 研究が限られており、標準的な投与量の情報は不明。
  • 商業的には「トローチ(Lozenges)」または「ハーブティー(Teas)」の形態で販売されることが多い。

⚠ 相互作用

✅ 医薬品との相互作用

🚨 経口薬(Oral Drugs)

  • 相互作用レベル:中程度(注意が必要)
  • 重症度:中等度
  • 発生可能性:あり
  • エビデンスレベル:D(理論的な予測)
  • スリッパリーエルムは胃腸内での薬剤吸収を遅延・低下させる可能性がある。

✅ サプリメントとの相互作用

  • 特に知られていない。

⚠ 過剰摂取(オーバードーズ)

  • 過剰摂取に関する信頼できる情報は不足。
  • 胃腸の不調が生じる可能性あり。

⚠ 作用メカニズム

1️⃣ 主成分

  • 粘液質(Mucilages)(主成分):消化管を保護し、潤滑作用を持つ
  • タンニン(Tannins)(収れん作用)
  • オレオレジン(Oleoresins)(接触性皮膚炎の原因となる可能性)

2️⃣ 消化器系への作用

  • 粘液質による「胃腸粘膜の保護作用」が主なメカニズム
  • 粘膜刺激により消化管内の粘液分泌を増加(6)。
  • 胃酸や潰瘍から粘膜を保護する可能性(4,18)。
  • トローチでは、粘液が「のど」に長く留まり、咳や咽頭炎の緩和が期待される(3)。

3️⃣ 皮膚への作用

  • 外用使用では、粘液質の保湿作用と収れん作用により「皮膚の保護・鎮静効果」が期待される(4)。
  • ただし、「オレオレジン」による皮膚炎リスクがある(6)。

⚠ まとめ

消化器系の不調(胃炎、IBS、潰瘍、下痢)に伝統的に使用されてきたが、科学的根拠は不十分。
トローチやお茶の形での使用が一般的で、胃腸粘膜の保護作用が期待される。
薬の吸収を遅らせる可能性があるため、服用タイミングに注意。
妊娠中の使用は避けるべき(堕胎作用の可能性)。
皮膚に触れると接触性皮膚炎を引き起こすことがある。

References

See Monograph References


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