ターペンタイン油 (Turpentine Oil)

投稿者 :リンクプロ on

学名

Pinus palustris(シノニム: Pinus australis, Pinus pinaster 他)

マツ科 (Pinaceae)


概要

ターペンタイン油は、ロングリーフパイン(Longleaf Pine)などのマツ属植物の樹脂(オレオレジン、ガムターペンタイン)を蒸留して得られる精油です。
また、「テルピン水和物(Terpin Hydrate)」は、ターペンタイン油から得られる半合成誘導体です。

ターペンタイン油は、ヴィックス・ヴェポラッブ(Vicks VapoRub)など、一部の市販の胸用塗布剤に香料成分として使用されています。
1900年代初期には、ターペンタイン油が有効成分として配合されていましたが、現在は不活性成分(添加物)としてのみ含まれています。


民間療法での使用例

■ 経口

  • 胃腸の細菌・ウイルス・真菌感染症
  • 自閉症スペクトラム障害(ASD)への使用例もある

■ 外用

  • リウマチ性関節炎
  • 筋肉痛
  • 歯痛
  • 多発性硬化症(MS)
  • 他の薬剤の皮膚吸収促進目的

■ 吸入

  • 慢性気管支疾患による痰の排出促進

■ 食品・飲料

  • 蒸留ターペンタイン油は香料として使用

■ 工業用途

  • 香水、食品、洗剤、石鹸、化粧品などの香料
  • 塗料の溶剤

安全性

■「外用(少量・短期間)」でおそらく安全
■「外用(大量・広範囲)」ではおそらく危険
 皮膚吸収による中毒・腎障害報告あり

■「経口摂取」は危険
 2mL/kgで中毒、成人120~180mLで致死量の可能性あり

■「吸入」に関する安全性情報は不十分

■「小児」
 経口使用は危険(15mLで致死例あり)
 外用・吸入も安全性情報不十分

■「妊娠・授乳」
 経口使用は危険(毒性・流産誘発の可能性)
 外用・吸入については情報不十分のため避ける


副作用

■ 経口

  • 頭痛、不眠、咳、肺誤嚥、嘔吐、血尿、蛋白尿、尿路炎症、昏睡、死亡

■ 吸入

  • 気道炎症、気道抵抗増加、咽喉部不快感

■ 外用

  • 少量では通常良好に耐えられる
  • 皮膚刺激、接触アレルギー、過敏症
  • 大量塗布では吸収による中毒例あり

効能

■「効果について十分な証拠がない」

  • 創傷治癒
     皮膚膿瘍の成人に、ターペンタイン油7.2%、カラマツターペンタイン5.4%、ユーカリ油1.2%などを含む軟膏(ilon, Abszess Salbe)を1日1回、10日間塗布で症状改善報告あり。
     ただし、効果がターペンタイン油によるものかは不明。

※ その他の用途についても、信頼できる臨床データが不足。


用法・用量

■ 成人

  • 一般的な用量設定はなし。

■ 標準化・製剤

  • 標準化に関する信頼できる情報はない。

相互作用

■「薬剤との相互作用」

  1. CYP1A2基質薬(カフェイン、テオフィリンなど)
     動物実験ではCYP1A2を最大90%阻害する可能性。ただし、フェナセチン(CYP1A2基質)の代謝には影響なし。

  2. 外用薬
     イブプロフェンの皮膚吸収を促進する報告あり。
     他の薬剤と併用で効果・副作用増加の可能性。

■「サプリメントとの相互作用」
 現時点で特に知られていない。


禁忌・注意が必要な疾患

  • 急性呼吸器炎症
  • 喘息、百日咳

過剰摂取

過剰摂取による毒性情報は不十分ですが、経口で容易に中毒・死亡リスクあり。


薬物動態

■ 吸収

  • 経口、皮膚、吸入で全身吸収
  • 吸入:60~70%肺から吸収
  • 外用:α-ピネン49%、β-ピネン24%が吸収

■ 代謝

  • 酸化され、ミルテノール、ベルベノール、ミルテン酸などに変換

■ 排泄

  • 78%が呼気(特徴的な香り)、22%が尿中排泄(約1.6時間でピーク)

作用機序

■ 一般

  • 長葉マツなどの樹脂を蒸留して得られる。
  • 主成分:α-ピネン59~85%、β-ピネン3~24%、カンフェン4~15%、リモネン5~15%など。
  • 種類や産地、収穫時期により成分比率が異なる。

■ 中枢神経系

  • 抑制作用あり。誤嚥すると肺障害リスク。

■ 皮膚

  • 刺激、発赤、鎮痛効果あり。
  • アメリカ産はR-α-ピネンが多く、ヨーロッパ産より刺激が強い。

■ 呼吸器

  • 冷感受容体刺激による血管収縮で鼻閉改善効果。

参考文献:

  • Natural Medicines Comprehensive Database
  • 厚生労働省「統合医療」情報発信サイト
  • 日本薬局方外生薬規格2022

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