トコトリエノール(Tocotrienols)
投稿者 :リンクプロ on
学名
アルファ-トコトリエノール、ベータ-トコトリエノール、ガンマ-トコトリエノール、デルタ-トコトリエノール
注意事項
トコフェロールを含む「ビタミンE」の項目とは別に扱う必要があります。
概要
ビタミンEは脂溶性必須栄養素で、2種類の化学構造に分類されます。
- トコトリエノール:不飽和側鎖(イソプレノイド側鎖)を持つビタミンE誘導体
- トコフェロール:飽和側鎖を持つビタミンE誘導体
トコトリエノールは、アナトー(ベニノキ)、パーム油、米ぬか油など天然由来のものが多く、麦芽、大麦、穀物、ナッツ類にも含まれます。1964年に最初に報告されましたが、1980~90年代にコレステロール低下作用や抗がん作用で注目され始めました。
安全性
【おそらく安全】
適切に内服した場合、安全とされています。
- 最大600mg/日を18か月間
- 200mg/日を最長5年間
外用については安全性に関する十分な情報がありません。
【妊娠・授乳中】
信頼できる情報が不足しているため、使用を避けるべきです。
副作用
一般に内服では良好に耐容されますが、臨床試験では有害事象は報告されていません。
- 外用:軽度のかゆみ
効果
【おそらく有効】
- 糖尿病:2型糖尿病患者で血糖コントロールを改善する可能性があります。
【おそらく無効】
- 高コレステロール血症:コレステロール低下効果は臨床的に意味のあるレベルではないとされています。
【証拠不十分】
- 加齢による認知機能低下:他成分との併用でのみ評価されており、単独効果は不明。
- アルツハイマー病、慢性腎臓病、糖尿病性腎症、乳がん、脂肪肝(NAFLD)、脳卒中後、更年期障害など、多くの用途について十分な研究がなく、さらなる証拠が必要です。
用量・使用方法
【成人・内服】
- 一般的に200~600mg/日を最長6か月間
【外用】
一般的な使用量については不明。
標準化・製剤
臨床研究では、混合異性体(アルファ、ガンマなど)として供給される製品が多い。
- Tocovid(200mg)
- Nutriene(高ガンマトコトリエノール、米ぬか油由来)
- PalmVitee(パーム油由来、アルファ、ガンマ、デルタ含有)
薬物相互作用
【抗凝固薬・抗血小板薬】
併用で出血リスク増大の可能性がありますが、ヒトでの報告はありません。
サプリメント・疾患・検査との相互作用
現時点で特筆すべき相互作用は報告されていません。
過剰摂取
過剰摂取時の症状や治療法について、信頼できる情報はありません。
薬物動態
【吸収】
食事性脂肪とともに吸収され、血漿中にカイロミクロンとして取り込まれます。
【分布】
脂肪組織、血小板、HDL・LDLコレステロールに取り込まれます。脳や皮膚にも到達します。
【代謝】
CYP4F2酵素によるω-水酸化反応を受け、カルボキシクロマノールに代謝されます。
【排泄】
半減期は4~7時間です。
作用機序
【抗酸化作用】
脂質過酸化を抑制し、活性酸素種(ROS)の生成を減少させます。細胞膜への浸透性が高く、トコフェロールよりも抗酸化活性が50倍高いとされます。
【抗がん作用】
細胞周期停止、アポトーシス誘導、炎症経路抑制、NF-κB活性阻害など、さまざまな経路でがん細胞増殖抑制が示唆されています(試験管・動物実験レベル)。
【抗糖尿病作用】
インスリン受容体基質1やGLUT4発現回復、骨格筋におけるAktシグナル増強、PPAR-γ活性化などにより、インスリン感受性を向上させると考えられています。
【抗炎症作用】
C反応性タンパク(CRP)低下作用が報告されていますが、IL-6やTNF-αへの明確な影響は限定的です。
【脂質低下作用】
HMG-CoA還元酵素の転写後抑制および分解促進により、LDLコレステロールや中性脂肪を低下させる可能性があります。ただし、ヒト臨床では効果に一貫性がありません。
【肝保護作用】
NAFLD患者でALT、AST、CRPなどの肝機能マーカー改善や、肝エコー異常改善が報告されています。
【神経保護作用】
グルタミン酸毒性からの保護作用、神経伝導速度改善が報告されています。
分類
脂溶性ビタミン群(ビタミンE群)
まとめ
トコトリエノールはビタミンEの一種で、特に抗酸化作用が強いことが注目されています。糖尿病や脂肪肝、炎症性疾患などで一部有効性が示唆されていますが、コレステロール低下作用など、従来期待されていた効果には否定的なデータもあり、用途によって評価が分かれています。安全性は高いとされていますが、抗凝固薬との併用には注意が必要です。今後、さらなる大規模臨床研究が求められる成分です。
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- タグ: サプリメント