バナジウム(Vanadium)

投稿者 :リンクプロ on

  • 学名: Vanadium, V, 原子番号23
  • 分類: 微量ミネラル

+ その他の一般名

(特定の一般名は記載されていません)


概要(Overview)

バナジウムは微量ミネラルであり、通常の食事で摂取されています。以下の食品に含まれています:

  • キノコ
  • 貝類
  • 黒コショウ
  • パセリ
  • ディルシード(ディルの種)
  • 穀物や穀物製品
  • ビール、ワイン、人工甘味料入り飲料(7135)

飲料水にも微量のバナジウムが含まれることがあります(3011)。


安全性(Safety)

経口摂取(LIKELY SAFE)

  • **適切な量(1日1.8mg以下)**での摂取は安全(7135)。

高用量の経口摂取(POSSIBLY UNSAFE)

  • 1日1.8mgを超える摂取では、胃腸の不調腎毒性のリスクが増加する可能性(7135)。
  • 一部の糖尿病患者は1日100mgを4週間使用しても問題なかった例がある(3055,3056,3057)。
  • しかし、長期間の高用量使用は腎障害を引き起こす可能性(7135)。
  • 1日22.5mgを5か月間使用すると、けいれんや下痢の副作用が発生することがある(3012)。

子供(CHILDREN: LIKELY SAFE)

  • 食品に含まれる量を摂取する限りは安全(7135)。
  • 食品に含まれる以上の量を摂取する場合の安全性は不明。

妊娠中(PREGNANCY: LIKELY SAFE / POSSIBLY UNSAFE)

  • 食品に含まれる量の摂取は安全(7135)。
  • 薬用量(高用量)は危険な可能性あり。
    • 尿中のバナジウム濃度が高いと、早産や破水のリスクが増加する(99052)。
    • 特に妊娠第2期のバナジウム曝露が胎児の発育不全を引き起こすリスクがある(102096)。

授乳中(LACTATION: LIKELY SAFE)

  • 食品に含まれる量であれば安全(7135)。
  • 高用量の安全性に関する信頼できる情報がないため、使用を避けるべき。

副作用(Adverse Effects)

一般的な副作用

  • 1日1.8mg以下の摂取では通常は良好に耐えられる。
  • 高用量摂取では以下の副作用が報告されている:
    • 胃腸障害(腹部不快感、下痢、鼓腸、吐き気)
    • 腎障害(長期間の高用量摂取時)
    • 皮膚炎やアレルギー反応(外用時)

効果(Effectiveness)

有効性が高いとされるもの(LIKELY EFFECTIVE)

① バナジウム欠乏症(Vanadium deficiency)

  • 経口摂取によって、バナジウム欠乏症を予防する効果がある

証拠が不十分なもの(INSUFFICIENT RELIABLE EVIDENCE TO RATE)

以下の用途に関しては、信頼できる証拠が不足している

  • 運動能力向上(Athletic performance)
  • がん治療(Cancer)
  • 糖尿病(Diabetes) → 高用量ではインスリン感受性の改善が示唆されているが、安全性の懸念あり。
  • 高脂血症(Hyperlipidemia)
  • 耐糖能異常(糖尿病予備軍)(Impaired glucose tolerance, prediabetes)

📌 結論: これらの用途での使用にはさらなる研究が必要。


投与量 & 使用方法(Dosing & Administration)

成人(Oral: 経口)

  • **バナジル硫酸塩(Vanadyl sulfate)**が最も一般的に使用される形態。
  • 1回50mgを1日2回、最大4週間使用(糖尿病患者の研究で使用)。
  • 国立医学研究所(National Institute of Medicine)による許容上限摂取量(UL)は1日1.8mg。
  • 一般的な食事からの摂取量は1日6~18mcg。

子供(Oral: 経口)

  • 研究が限られているため、推奨用量は不明。
  • 乳児や子供のバナジウム摂取は、食品や乳児用ミルクに含まれる量に制限するべき(7135)。

相互作用(Interactions)

薬物との相互作用

1. 抗凝固薬・抗血小板薬(Anticoagulant/Antiplatelet drugs)

  • 相互作用評価: 中程度(Moderate)注意が必要
  • リスク: 出血リスクが増加する可能性あり

2. 糖尿病治療薬(Antidiabetes drugs)

  • 相互作用評価: 中程度(Moderate)注意が必要
  • リスク: 低血糖のリスクが増加する可能性あり

サプリメントとの相互作用

  • 抗凝固作用のあるハーブ・サプリメントとの併用は避ける。
  • 低血糖を引き起こす可能性のあるハーブ・サプリメントとの併用に注意。

薬理作用(Mechanism of Action)

  • バナジウムは微量ミネラルであり、通常の食事に含まれる。

  • 糖尿病に対する作用

    • インスリン受容体をリン酸化し、インスリンの作用を模倣する可能性あり
    • インスリン受容体を活性化し、ブドウ糖の取り込みを増加させる可能性
    • 糖新生(肝臓でのブドウ糖生成)を抑制
  • 骨の健康に対する作用

    • 骨の正常な成長に関与
    • リン酸転移酵素(Phosphoryl-transfer enzymes)の阻害作用を持つ
  • 心血管系への作用

    • 長期間の投与で血圧上昇のリスクがある可能性(3012)。
    • コレステロール合成を阻害する可能性(3012)。
  • 歯の健康への作用

    • 虫歯を予防する可能性が示唆されている(3012)。

結論(Summary)

食品に含まれる量の摂取は安全だが、高用量の使用は副作用のリスクがある。
バナジウム欠乏症の予防には有効。
糖尿病患者のインスリン感受性を改善する可能性があるが、高用量の使用には注意が必要。
長期の高用量使用は腎障害のリスクがあるため避けるべき。
出血リスクや低血糖リスクを増加させる可能性があるため、薬との併用に注意が必要。

 

References

See Monograph References


この投稿をシェアする



← 投稿順 新着順 →