バレリアン(Valerian)

投稿者 :リンクプロ on

  • 学名: Valeriana officinalis, Valeriana edulis, Valeriana angustifolia など
  • 科: バレリアン科 (Valerianaceae)

⚠️ 注意: バレリアンはレッドスパーバレリアン(Red-Spur Valerian)と混同しないようにしてください。


概要(Overview)

バレリアンは多年生の草本植物で、羽毛状の葉と白~ピンク色の小さな花を持ちます。ヨーロッパやアジアの一部が原産ですが、北アメリカでも栽培されています(81723)。
**高さは約2メートル(6フィート)**に達し、特有の強い香りを持つのが特徴です(81723)。
古代ギリシャ・ローマ時代から鎮静剤として使用されてきた歴史があります(56982)。


安全性(Safety)

経口摂取(LIKELY SAFE)

  • 適切な用量(1日300〜600mg)で短期間(最大6週間)使用した場合、安全と考えられる(2074,3484,3485,4032,15018,17577,17578,19409,96242,103221,104010,105718)。
  • 6週間以上の長期使用の安全性については十分な情報がない

子供(CHILDREN: POSSIBLY SAFE)

  • 12歳未満の子供に1日160〜320mgを4〜8週間使用した場合、安全と考えられる(14416)。

妊娠・授乳中(PREGNANCY AND LACTATION)

  • 信頼できる情報が不足しているため、使用を避けることが推奨される。

副作用(Adverse Effects)

一般的な副作用

  • 経口摂取時は通常よく耐えられる。

最も一般的な副作用

  • めまい
  • 眠気
  • 認知機能の低下
  • 頭痛
  • 胃腸の不調
  • 興奮
  • 鮮明な夢を見ることがある

長期間使用後の急な中止に伴う症状(離脱症状)

  • 頻脈(心拍数の増加)
  • 不安感
  • 過敏性(イライラ)
  • 不眠症

📌 長期間使用した場合は徐々に減量することを推奨。

稀な重篤な副作用

  • 肝毒性: バレリアンやバレリアンを含むサプリメント使用後に肝機能障害の報告あり。
  • 心不全: 長期間使用後の離脱により心不全が報告されたケースあり。
  • 幻覚: 長期使用後の急な中止により幻覚を伴う症例あり

効果(Effectiveness)

可能性がある効果(POSSIBLY EFFECTIVE)

① 不眠症(Insomnia)

  • ほとんどの研究でバレリアン根エキス300~600mgを毎日摂取すると、主観的な睡眠の質が改善すると報告(ただし、効果を感じるまで最大4週間かかる可能性がある)。
  • 睡眠の開始時間(入眠時間)、総睡眠時間、不眠症の重症度には影響しない。

📌 結論: 不眠症の改善には多少の効果がある可能性があるが、即効性は期待できない。

信頼できる証拠が不足しているもの(INSUFFICIENT RELIABLE EVIDENCE)

バレリアンの以下の用途については、信頼できる証拠が不十分

  • 不安(Anxiety)
  • せん妄(Delirium)
  • うつ病(Depression)
  • 月経困難症(Dysmenorrhea)
  • 更年期症状(Menopausal symptoms)
  • 月経前症候群(PMS)
  • 術前の不安(Pre-procedural anxiety)
  • むずむず脚症候群(RLS)
  • ストレス(Stress)
  • 緊張型頭痛(Tension headache)

📌 結論: 上記の用途に関しては、さらなる研究が必要。


投与量 & 使用方法(Dosing & Administration)

成人(Oral: 経口)

  • 1日300〜600mgを最大6週間使用。
  • 7日間の連続使用では、合計1215mgまで使用された例あり。
  • バレリアンはホップ、パッションフラワー、レモンバームなどの他の鎮静ハーブと組み合わせて使用されることが多い。
  • 長期使用は依存のリスクがあるため、慎重に使用する必要がある。

子供(Oral: 経口)

  • 研究が限られているため、推奨用量は不明。

相互作用(Interactions)

薬物との相互作用

1. アルコール(Ethanol)

  • 相互作用評価: 中程度(Moderate)注意が必要
  • リスク: 鎮静作用が増強される可能性

2. アルプラゾラム(Xanax)

  • 相互作用評価: 中程度(Moderate)注意が必要
  • リスク: 鎮静作用が増強される可能性あり。また、高用量のバレリアンはアルプラゾラムの血中濃度をわずかに上昇させる可能性あり。

3. 中枢神経抑制薬(CNS depressants)

  • 相互作用評価: 中程度(Moderate)注意が必要
  • リスク: 鎮静作用が増強される可能性

過剰摂取(Overdose)

  • 症状: 精神状態の変化、高血圧、頻脈、瞳孔拡大、震え、発汗、興奮、妄想などが報告されている。
  • 治療: 信頼できる情報は不足しているが、過剰摂取が疑われる場合は医師の診察を受けることが推奨される。

薬理作用(Mechanism of Action)

  • バレリアンの主要成分はバレレニン酸、バレラノン、ケッセルグリコールなどのセスキテルペン類
  • バレリアンはGABA(γ-アミノ酪酸)受容体に作用し、鎮静作用を発揮する可能性がある。
  • セロトニン(5HT1)受容体やアデノシン受容体にも作用し、抗不安作用を示す可能性がある。
  • **バレポトリエート(Valepotriates)**は不安症状を軽減する可能性があるが、体内で急速に分解される。
  • 抗炎症作用や胃粘膜保護作用も示唆されている。

結論(Summary)

不眠症に対してはある程度の効果が期待できるが、即効性はなく、4週間程度の継続が必要。
鎮静・抗不安作用がある可能性があるが、証拠は不十分。
長期使用後の急な中止は避け、徐々に減量することが推奨される

 

References

See Monograph References


この投稿をシェアする



← 投稿順 新着順 →