重炭酸ナトリウム(Sodium Bicarbonate)

投稿者 :KhanhMinh on

学名: Sodium Hydrogen Carbonate(炭酸水素ナトリウム)

分類: 塩(アルカリ性物質)


⚠ 注意

重炭酸ナトリウムはナトリウム(Sodium)とは異なる
また、食塩(塩化ナトリウム)とも異なるため、混同しないこと


🔍 概要

重炭酸ナトリウムは水溶液中でナトリウムイオンと炭酸水素イオンに分解する塩(29411)。
この解離によりアルカリ性を示し、体液(血液・尿・胃液など)が酸性に傾いた際の治療に使用される


🛡 安全性

✅ 口から適切に摂取する場合

  • 一般的な用量では安全(LIKELY SAFE)。
  • 市販の制酸剤(胃酸を中和する薬)としての使用は米国食品医薬品局(FDA)が安全と認定(90912)。
    • 最大2週間の使用が推奨される。
    • 60歳以下の成人:最大200mEq/日(ナトリウム・重炭酸塩それぞれ)。
    • 60歳以上の成人:最大100mEq/日(ナトリウム・重炭酸塩それぞれ)。
  • 低用量(17.5~35mEq/日)の使用では2年間の安全性が確認(104845, 104851)。

✅ 静脈内(IV)投与

  • 適切な医療監督のもとで使用される場合は安全(13309)。
  • 電解質補充剤および全身アルカリ化剤としてFDAが承認

✅ 口腔洗浄・歯磨き

  • 1日2回までの使用は安全(97731, 98210)。

⚠ 過剰摂取のリスク

  • 20例以上の胃破裂が報告(29414, 29415, 29416, 29962, 90913)。
    • 大量の食事後に胃の不快感を和らげる目的で摂取した患者に発生
    • 粉末のまま、または不完全に溶解した形で摂取すると胃内で二酸化炭素が過剰発生し、胃拡張・破裂のリスク
  • 長期または過剰使用で代謝性アルカローシスを引き起こす可能性
    • 低カリウム血症(Hypokalemia)
    • 低塩素血症(Hypochloremia)
    • 高ナトリウム血症(Hypernatremia)(25733, 29962, 90913)

🔹 小児

  • 静脈内投与は適切な医療監督のもとで安全(13309)。
  • 局所(皮膚)使用は危険の可能性
    • 重炭酸ナトリウム(ベーキングソーダ)の外用で高ナトリウム血症を発症した2例が報告(29962, 90914)。
  • 口からの摂取については十分なデータがないため、医師の指示なしに使用を避けるべき

🤰 妊娠・授乳

  • 妊娠中・授乳中の経口または静脈内投与は可能性として危険(POSSIBLY UNSAFE)。
    • 代謝性アルカローシスや体液貯留を引き起こす可能性(90915)。
    • 安全性に関する十分な情報がないため、使用を避けるのが望ましい

🩺 副作用

一般的な用量では通常問題なし
しかし、過剰摂取は以下の症状を引き起こす可能性

軽度の副作用

  • 胃腸系: 腹痛、膨満感、下痢、鼓腸(ガス)、吐き気、嘔吐。

重篤な副作用(まれ)

  • 経口摂取: 代謝性アルカローシス、胃破裂。
  • 静脈投与: アルカローシス性テタニー、高ナトリウム血症、低カルシウム血症、低カリウム血症。

💊 効能・有効性

✅ 効果が確認されている疾患(LIKELY EFFECTIVE)

  • 消化不良(Dyspepsia)
    • 市販の制酸剤としてFDAが効果を認定

🔸 効果の可能性がある疾患(POSSIBLY EFFECTIVE)

  • 運動パフォーマンス向上
    • 口からの摂取で運動能力が向上する可能性がある(静脈投与や外用の有効性は不明)。
  • 薬物誘発性ナトリウムチャネル遮断
    • 静脈投与が有効とされる
  • 歯肉炎(Gingivitis)
    • 歯磨き時に使用すると症状改善が期待される

⚠ 効果が不明な疾患(INSUFFICIENT EVIDENCE)

  • 慢性腎臓病(CKD)
  • 胃食道逆流症(GERD)
  • 尿路感染症(UTI)
  • がん
  • 湿疹(アトピー性皮膚炎)
  • 腎結石
  • 筋力向上さらなる研究が必要

💊 投与・用量

🔹 成人

  • 口からの摂取(Oral)

    • 100~400mg/kg40~360分前 に摂取(運動時)。
    • 3~7日間連続で摂取する場合もある
  • 静脈内・筋肉内(IV/IM)投与

    • 病状により異なる(詳細は「効果」セクション参照)。
  • 局所使用(Topical)

    • 歯磨き粉、マウスウォッシュ、点耳薬、ガーゼで使用される

🔹 小児

  • 静脈内・筋肉内(IV/IM)投与
    • 適切な医学的監督のもとで使用可能

⚠ 相互作用

🚨 重炭酸ナトリウムと薬の相互作用

⚠ 使用に注意が必要な薬

  1. アミノグリコシド系抗生物質
    • 低カリウム血症リスク増加
  2. アンホテリシンB
    • 低カリウム血症リスク増加
  3. アスピリン
    • アスピリンの血中濃度低下の可能性
  4. β刺激薬
    • 低カリウム血症リスク増加
  5. シスプラチン
    • 低カリウム血症リスク増加

📌 まとめ

重炭酸ナトリウムは胃酸中和や血液・尿のpH調整に使用される
適量なら安全だが、過剰摂取は高ナトリウム血症・胃破裂・代謝性アルカローシスのリスクあり
運動パフォーマンス向上、薬物中毒、歯肉炎には有効性が期待される
妊娠中・授乳中の使用は避けるべき
薬との相互作用に注意が必要(特に抗生物質・アスピリン・β刺激薬)。

References

See Monograph References


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