ビンポセチン(Vinpocetine)

投稿者 :リンクプロ on

  • 学名: Eburnamenine-14-carboxylic acid, Ethyl Ester
  • 由来: ビンカ・マイナー(Vinca minor) に含まれるアポビンカミン(Apovincamine)を合成的に改良した誘導体(10827)。
  • 分類: 一部のヨーロッパ諸国では Cavinton という商品名で処方薬として使用されている。
  • 主な用途: 認知機能障害、脳卒中。

⚠️ 米国における規制と警告

  • 米国では、ビンポセチンは 食品サプリメントの成分として販売されているが、法的な位置づけは不明確(92936)。
  • FDA(米国食品医薬品局)は2016年9月に、ビンポセチンがサプリメントとして適格かどうかを再検討する声明を発表。
  • 2019年6月、FDAは妊娠中または妊娠の可能性がある女性に対し、ビンポセチンの使用を避けるよう警告(95751)。

安全性(Safety)

可能性として安全(POSSIBLY SAFE)

  • 口から適切に摂取すれば 最長12ヶ月まで安全(1784,1788,82041,82074,82121,82152,104522)。
  • 静脈注射で短期間使用した場合も一般的に安全(82074,82147,82159,110744)。

⚠️ 妊娠中の使用(PREGNANCY: POSSIBLY UNSAFE)

  • ラット実験では、ビンポセチンの摂取により流産リスクが増加(60mg/kg/日)、胎児の体重減少、先天性異常の増加(5-20mg/kg/日)
  • ヒトに換算すると10mg/日で影響が出る可能性がある(99701)。
  • FDAは、妊娠中や妊娠の可能性がある人は使用を避けるべきと警告(95751)。

⚠️ 授乳中の使用(LACTATION)

  • 信頼できるデータが不足しているため、使用を避けるべき。

副作用(Adverse Effects)

一般的な副作用

  • 口から摂取: 不安感、めまい、頭痛、ほてり、胃の不快感、不眠、じんましん。
  • 静脈注射: 心律不整(不整脈)。

重篤な副作用(まれ)

  • 口から摂取: 無顆粒球症、不整脈、けいれん発作
  • 静脈注射: 不整脈

効果(Effectiveness)

「可能性がある(Possibly Effective)」

  1. 認知症(Dementia)
    • 最大1年間の摂取で、軽度な認知機能の改善が報告されている(1785,68731,92932)。

⚠️ 「十分な証拠がない(Insufficient Reliable Evidence to Rate)」

  1. 加齢による認知機能低下 → 有効性の証拠不足。
  2. 加齢黄斑変性症(AMD) → 効果不明。
  3. 慢性疲労症候群(CFS) → 証拠不足。
  4. てんかん(Epilepsy) → 研究はされているが有効性は不明。
  5. 聴力低下(Hearing Loss) → 研究はあるが不明。
  6. 記憶力向上(Memory) → 健常者において わずかに改善 する可能性がある。
  7. 更年期症状(Menopausal Symptoms) → 証拠不足。
  8. 乗り物酔い(Motion Sickness) → 証拠不足。
  9. 脳卒中(Stroke)静脈注射による治療の研究結果が混在しており、経口摂取の有効性は不明
  10. 耳鳴り(Tinnitus) → 効果不明。
  11. 尿失禁(Urinary Incontinence) → 効果不明。

投与量 & 使用方法(Dosing & Administration)

成人(Adult)

① 経口(Oral)

  • 1回10mgを1日2〜3回、最長4ヶ月間服用。
  • 食事と一緒に摂ることで吸収率が向上する(1802)。

② 静脈注射(Intravenous)

  • 10mgを1日2回、または30mgを1日1回、最大1〜2週間投与。

薬物相互作用(Interactions with Drugs)

⚠️ 「注意が必要(Moderate)」

  1. 抗凝固薬・抗血小板薬(Anticoagulant/Antiplatelet Drugs)

    • ビンポセチンは血液をサラサラにする作用があり、これらの薬と併用すると出血リスクが増加する可能性
  2. シトクロムP450 2C9(CYP2C9)基質(Cytochrome P450 2C9 Substrates)

    • CYP2C9で代謝される薬の血中濃度が上昇する可能性がある。

⚠️ 「軽度な注意(Minor)」

  1. ワルファリン(Warfarin)
    • ワルファリンと併用すると出血リスクがわずかに増加する可能性

薬理作用(Mechanism of Action)

① 抗炎症作用(Anti-inflammatory Effects)

  • 炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6など)の発現を抑制する可能性(106844,112879)。
  • 皮膚炎(アトピー性皮膚炎、乾癬)の改善効果がマウスモデルで報告されている(110745,112881)。

② 抗酸化作用(Antioxidant Effects)

  • 老化したラットの膵島細胞において酸化ストレスマーカーを減少させた(106844)。
  • 動物モデルでは、グルタチオンとスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を増加させることが示唆されている(112879)。

③ 心血管系への影響(Cardiovascular Effects)

  • 炎症抑制により、動脈硬化や心筋症を改善する可能性(92935,112879)。
  • 血小板凝集を阻害し、赤血球の柔軟性を向上させることで脳血流を増加させる可能性(1790,1791,82117)。

④ 認知機能改善(Memory Enhancement Effects)

  • 脳血流やグルコース代謝を改善し、神経細胞の死滅を抑制する可能性がある(1786,82061,82133,82172,112882)。

まとめ

軽度の認知機能改善には可能性があるが、証拠は限定的。
妊娠中・授乳中は使用を避けるべき。
抗血小板作用があるため、出血リスクのある人は注意。
一部の動物研究では抗炎症作用や抗酸化作用が示唆されている。
効果のある疾患が限定的であり、さらなる研究が必要。

References

See Monograph References

 


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