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学名: Persicaria odorata(別名 Polygonum odoratum)
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科: タデ科 (Polygonaceae)
概要(Overview)
ベトナムコリアンダーは、東南アジア(中国、ベトナム、タイなど)に自生するハーブ。
主に葉が香辛料や香味野菜として使用され、特にベトナム料理のサラダ、煮込み料理、スープ、マレーシアのラクサ(Laksa)などに用いられる(26212)。
+ 歴史(History)
人々の使用目的
① 経口摂取
- 糖尿病の管理
- 腹痛の緩和
- 便秘の改善
- 胃腸の膨満感(ガス)を軽減
- 性欲の抑制
② 外用(皮膚・頭皮への適用)
安全性(Safety)
- 安全性に関する信頼できる情報が不足している。
- 妊娠・授乳中の使用についても十分な情報がないため、避けるべき。
効果(Effectiveness)
- ベトナムコリアンダーの有効性に関する信頼できる情報は不足している。
投与量 & 使用方法(Dosing & Administration)
- 標準的な用量や推奨される製剤に関する十分な情報がない。
標準化 & 製剤化(Standardization & Formulation)
- ベトナムコリアンダーの標準化に関する信頼できる情報は不足している。
相互作用(Interactions)
薬物との相互作用
サプリメントとの相互作用
過剰摂取(Overdose)
- 動物実験では、5g/kgの水抽出物を経口投与しても毒性は確認されなかった(27238)。
薬理作用(Mechanism of Action)
一般的な特性
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適用部位: 地上部(葉・茎)
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主な化合物:
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脂肪族アルデヒド: (Z)-3-ヘキセナール、(Z)-3-ヘキセノール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナール、3-スルファニル-ヘキセナール
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脂肪族アルコール: 3-スルファニル-ヘキサン-1-オール
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エステル: メチルオクタン酸、メチルデカン酸、メチルドデカン酸、メチルヘキサデカン酸
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脂肪酸: デカン酸、(Z)-2-ヘキセノ酸、ドデカン酸、オクタン酸
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テルペノイド: β-ビサボレン、γ-エレメン、カルビトール、ゲラニオール、(E)-ネロリドール
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フラボノイド: クエルセチン、ケンフェロール、ルチン、カテキン、イソラムネチン
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その他: カリオフィレンオキシド、4-デカノリド、チャビコール、8-メチル-ジヒドロベンゾピロン(26211,26212,26213,104523)。
主な薬理作用
① 抗がん作用(Antineoplastic Effect)
- ベトナムコリアンダーの根に含まれる「8-メチル-ジヒドロベンゾピロン」は、抗アポトーシスタンパク質Bcl-2をリン酸化により不活性化し、乳がん細胞の細胞分裂を停止させる(26213)。
- 葉の抽出物は、正常細胞には影響を与えずに乳がん細胞の成長を阻害することが試験管研究で確認されている(26215)。
② 抗酸化作用(Antioxidant Effect)
- ベトナムコリアンダーには、フラボノイド(クエルセチン、ケンフェロール、ルチン、カテキン、イソラムネチン)を含む(26214,26215,104523)。
- DPPHラジカル消去試験とFRAP試験により、葉・茎抽出物に抗酸化作用があることが確認されている(26215,26216,104523)。
- 特に葉の抽出物が、茎の抽出物よりも抗酸化成分を多く含むことが示唆されている(104523)。
③ 骨の健康(Bone Effects)
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閉経前後および閉経後の女性を対象とした小規模な臨床研究で、ベトナムコリアンダーとホワイトマルベリー(White Mulberry)の混合抽出物を8週間摂取すると、以下のマーカーに変化が見られた(100626):
- 骨形成マーカー(オステオカルシン、アルカリホスファターゼ)の増加
- 骨吸収マーカー(C-テロペプチド型I型コラーゲン:CTX)の減少
- ただし、骨密度の臨床的な改善があるかどうかは不明。また、この効果がホワイトマルベリーかベトナムコリアンダーによるものかは不明。
④ 胃粘膜保護作用(Gastroprotective Effects)
- 動物実験で、エタノール投与1時間前にベトナムコリアンダーの水抽出物を摂取させると、胃粘膜損傷を防ぎ、粘液の分泌を増加させることが示された(27238)。
- これにより、ベトナムコリアンダーは胃潰瘍の予防に役立つ可能性がある。
結論(Summary)
✅ 食品に含まれる量であれば安全だが、薬用量の使用については研究が不足している。
✅ 伝統的に糖尿病、消化器症状、性欲抑制、フケ治療などに使用される。
✅ 試験管研究で乳がん細胞の成長を抑制する効果が示唆されているが、臨床研究は不足。
✅ 抗酸化作用が確認されており、葉の抽出物が特に有効とされる。
✅ 閉経後女性の骨代謝に影響を与える可能性があるが、効果の確証は得られていない。
✅ 動物研究で胃粘膜保護作用が確認されているため、胃潰瘍予防の可能性あり。
✅ 妊娠・授乳中の使用は避けるべき。
References